この論文はどんな内容?
今回紹介するのは,
医学誌 Medicine に掲載された,「子宮内膜がとても薄い状態(3.8mm)でも自然妊娠し,無事に出産できた」 という珍しいケースの報告です.
一般的には,子宮内膜が 4mm未満だと妊娠が非常に難しいと言われています. それでも妊娠・出産まで進んだという点で,患者さんにとって希望になる内容です.
どのような患者だったのか?
- 25歳
- PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)があり、排卵が不安定
- 排卵を促す薬(レトロゾール:フェーマーラの成分)を使用
- 排卵直前の子宮内膜の厚さは 3.8mm と、とても薄い状態だった
(論文記載:hCGトリガー日の内膜厚が3.8mm )
どんな治療をしたの?
内膜を厚くするために、次のような治療が行われました。
- エストロゲン(Progynova)
- 低用量アスピリン(血流改善のため)
*補足:低容量アスピリンは血栓を出来にくくすることで,毛細血管レベルの血流を改善し,内膜の受容能高める可能性が示唆されている. - 黄体ホルモンの補充(妊娠を支えるため)
ただし,治療をしても内膜は 3.8mm → 4.7mm と,排卵後も大きくは増えませんでした.
それでも妊娠できた理由は?
論文では,妊娠できた理由として次の点が挙げられています.
① 内膜の「形」が良かった
内膜が薄くても,“3ラインサイン”という排卵前に見られる良い状態とされる形をしていました.
② 内膜の血流が良かった可能性
アスピリンが血流改善に働き,内膜の質(受け入れる力)が良くなった可能性があります.
③ 内膜の“厚さだけ”が妊娠のすべてではない
論文は,「内膜の厚さだけで妊娠の可否を判断すべきではない」 と強調しています.
結果はどうなったのか?
- hCGトリガー後のタイミングで 自然妊娠
- 妊娠中に切迫症状や妊娠高血圧はあったものの
- 36週で元気な男の子を出産
この症例が伝えてくれること
「薄い内膜=絶対に妊娠できない」ではない
もちろん,内膜が薄いと妊娠率が下がるのは事実です.
しかしながら、この症例のように,
- 内膜の形
- 血流
- 内膜の質
- ホルモンバランス
- タイミング
などが整えば, 薄くても妊娠・出産につながる可能性がある ということが示されています.
