当室を受診されるまでの状況
元々,慢性的に鼻炎があり,時々耳鼻科を受診したり,薬局で薬を買うなどしていた.
1年ほど前から,鼻の奥から喉に流れ落ちる鼻水の不快感が大きくなり,気になりすぎてなかなか寝つけないという.仕事などに集中できているときは気にならないこともあるが,夜間や休日などのオフタイムは気になることが多い.また,調子の悪いときは仕事に集中できないこともある.
耳鼻科には既に通院していて,副鼻腔炎と云われて,抗生剤,点鼻薬や抗アレルギー剤などを使用している.薬を使用することで一時的には症状は改善するが,後鼻漏に関しては満足感は得られていない.鼻洗浄(鼻うがい)もしているが,スッキリ感が得られる時間は限定的であるという.
耳鼻科で漢方薬を試したこともあるが,胃が痛くなったので中止した.
後鼻漏以外の症状など
症状としては,絶えず喉に粘つく感じがあり不快極まりない,イライラする,寝つきが悪い,頭重,鼻づまり,などを頻りに訴える.喉が不快なのか,咳払いが多い.
床に入って寝つくまでに一時間ほど掛かるという.
初診時の舌・脈
舌:紅,苔:黄
脈:弦
施術内容
置針法
低周波置針療法(頭皮鍼)
棒灸
施術頻度は1回/週
主に使用した経穴
百会/脳戸/風池/肝兪/脾兪/上星/顖会/豊隆/攅竹/鼻通/尺沢など
頭部の経穴には低周波置針法と棒灸を施術
自宅療法
濡らした新聞紙を使用した温灸法を可能な限り毎日施術してもらう.
首尾
当室に来る前から行っていた薬剤による治療と併用であるが,3ヶ月ほどで後鼻漏による不快感を感じることがなくなったので施術を終了する.
備考
当初,施術直後には症状の軽快感が得られていたが,長時間は持続しなかった.このため,清熱・通鼻利竅を目的に,自宅で頭頂部への《濡れ新聞紙を使用した温灸》を毎日行ってもらった.後鼻漏症状の軽快感が得られるようになり,頭重も減少し,徐々に寝つきも良くなり始めた.
3ヶ月ほど経過したところで,本人の自覚症状がほぼ無くなったので施術を終了した.
濡れ新聞紙を使用した温灸とは
- 新聞紙を10㎝四方程度の大きさに切る
- その新聞紙を10枚~20枚ほど重ねて,水に浸す
- 水がしたたらない程度に余分な水分を払う
- 温灸用の艾をピンポン球程度の大きさに硬く撚る
- 硬く撚った艾を円錐形に整える
- 濡れ新聞紙の上に置き,点火する
- その新聞紙を頭頂部において灸をすえる
※徐々に熱が通り熱く感じて来ます.熱すぎるように感じたら,新聞紙をずらして場所を移動します.そして,また熱くなったら元の場所に移動する,を繰り返します.
※百会から顖会・上星あたりの頭頂部正中の経穴に据えます.
※女性はヘアピンなどで髪を抑えて施術した方が熱が通りやすいです.
※使用する艾の質や艾を撚る堅さによって温灸の燃焼時間は変化しますが,5~10分程度を目安に行ってください.