上星
「頭部の経穴を天球上の星に見立てて…」「配穴をその形から星座に見立てて…」などというようなロマンチックな逸話は,(わたくしが知らないだけかも知れませんが)存じません.
東洋医学学術出版社の針灸学経穴編によると,「本穴は頭の上(高いところ)にあり,星辰に届くとことにたとえられたて命名された」とあります.単に高いところであれば,顖会,前頂,百会の方が高いですし,少し不思議ですね。
この穴は,奇経である督脈に属するツボで,そのことから神志(精神思惟活動)や五官の疾患に適していることが窺えます.
気のせいなのか?
思い込みかも知れませんが,この時期(春)になると毎年のように「今年は花粉の飛散量が多いです」って耳にしているような気がします.
わたくしの思い違いで単なる気のせいであるのならば,個人的に深刻な状態なのかも知れません…
今後感染対策がどのように変わっていくのかについては,わたくしめには分りません.COVID19のため常に窓開けて換気を行っていると,ほぼ屋外にいるような状態になってしまうので,実際の飛散量以上に「しんどい」と感じてしまいます.
クライアントの前で鼻でも啜ろうものなら瞬時に距離をとられてしまう,緊張をはらんだ気が場を支配する,といった経験をされた方も少なくないかと思います.
アレルギーと炎症と感染と
説明するまでもありませんが,花粉症はスギなどの花粉によって引き起こされる目や鼻などの炎症を主な症状とするアレルギー疾患です.
抗ヒスタミン剤の服用やステロイドを含めた点眼薬の使用で,かなり症状をコントロールすることが可能になってきています.
人によっては完全には症状をコントロールできない,仕事や何らかの事情で眠気を伴う傾向がある薬はあまり服用したくない,眼圧が…といった懸念があろうことは想像に難くありません.
目鼻は外界と接する領域でもあります.そこが炎症状態だと保護機能といいますか抵抗力が低下するため,ウィルスや細菌が侵入しやすくなるともいわれています.
昨今,新型コロナの感染対策も徐々に緩和されつつあるため,感染リスク上昇の危機感を募らせている方もあろうかと思います.
そもそも,マスクは相手に移さないものであって,自分自身を直接プロテクトするものではありません.自身をプロテクトする手段として登場した方法の一つにワクチンがありますが,人によっては使えないとか,効果が低いなど万能ではありません.
「自分を護るマスク」くらいは開発されるのかな?と予想していましたが,わたくしめの如き愚才の知る限りでは登場しなかったようですね.勿論,ガスマスクのようなごついものではなく,N95のように苦しいものでもなく,普通の不織布程度に楽に呼吸が出来て納得価格でという意味です.
粘膜や結膜の炎症により感染のリスクが上がる可能性があるならば,自分自身を護る為に目鼻の炎症を整えて,感染のハードルを上げておくという考え方が浮上します.その一つが「お灸」「鍼」であると思います.
お勧めのツボ(経穴)はどこですか?
即効性を感じられ,コツさえ掴めばセルフケアも可能な「上星穴」がお勧めです.この記事のタイトルに「上星」が入っていますから必然ですね.
上星は督脈という奇経の経穴です.督脈は陽脈の海と称され,その流れは脳に入り,また頭頂部で手足の陽経と交わります.脳は元神の府で精神活動を担い,五官や四肢の運動・感覚などをも支配します.その脳と督脈は密接に関係します.
督脈にもツボはいくつもありますが,上星穴は鼻や目と関連の深いツボです.
もう少し詳しくいうと,目や鼻の熱を清する清熱という作用が強いことが挙げられます.
- 目がかゆい
- 目が充血し腫れて痛む
- 鼻水が止まらない
- 鼻をかむと鼻血が出る
- 鼻が詰まって匂いが分らない
- 目が痛んで見ることが出来ない
- 突然顔面部が腫脹する
花粉症に関連するこれらの症状は,いずれも熱と関連の深い症状です.専門的には他の経穴と組み合わせて使用することが多いですが,「上星」はファーストチョイスとしてもお勧めなツボです.
どのような施術が向いているのか?
鍼灸はバラエティに富むのが特徴の施術ですから,様々な方法が存在するのだろうと思います.愚才の治療室では,花粉症に関しては棒灸と低周波置鍼を使用して上星を刺激しています.上の低周波置鍼の写真は顖会と前頂への施術風景ですね.上星へ施術している写真がなかったので代用します.
花粉症以外の治療であれば灸点紙を使用した点灸を行うこともありますが,花粉症への対処であれば棒灸と低周波置鍼の二択です.
上星への棒灸であれば,コツさえ掴めばセルフケアとして自身で行うことが可能だろうと思います.わたくしめはスモークレスを使用していますが,棒灸は通常タイプ・スモークレスにかかわらず,たまにパチパチと弾けることがあります.目の周囲には使用しなう方がよろしいかと個人的には思います.