卵管水腫とは?妊娠への影響を分かりやすく整理します
不妊治療を受けている方の中には, 「卵管水腫があります」と説明を受けている方もいらっしゃるかと思います.
そこで今回は,
・卵管水腫とはどのような状態なのか
・妊孕性にどのように関係するのか
については,できるだけ分かりやすく整理してお伝えします.
卵管とはどのような場所か
卵管は,卵巣と子宮をつなぐ細い管です.
役割としては,
・排卵された卵子を取り込み移送する
・精子と卵子が出会う場になる
・受精卵を子宮へ運ぶ
という重要な働きを担っています.
つまり,卵管は単なる「通り道」ではなく, 妊娠成立に深く関わる臓器です.
卵管水腫とは
卵管水腫とは,卵管の先端が塞がり,内部に液体がたまって腫れてしまった状態です.
イメージとしては,細いホースの出口が詰まり,中に液体が溜まって膨らんでいる状態に近いかもしれません.
原因としては,
・過去の骨盤内炎症
・クラミジア感染
・子宮内膜症
・腹部手術後の癒着
・原因不明の炎症
などが関与すると考えられています.
上の原因からも分かるように、卵管水腫では,「炎症」による卵管周囲の「癒着」が大きく関わるとされています.
癒着とは,本来は滑らかに動くはずの組織同士が,炎症後の修復過程で貼り付くようにくっついてしまう状態です.
例えば,傷が治るときに「かさぶた」や「瘢痕」ができるように,体内でも炎症後には修復反応が起こります.
その結果,
・卵管の先端が塞がる
・卵管が曲がる
・卵巣や周囲組織と貼り付く
などの変化が生じることがあります.
すると,卵子をうまく取り込めなくなったり,卵管内に液体がたまりやすくなったりして,卵管水腫につながる場合があります.
特にクラミジア感染は,女性の場合では自覚症状が乏しいまま卵管障害を残すことがあるため注意が必要です.
なぜ卵管水腫が妊娠しにくさにつながるのか?
卵管水腫があると,妊娠率が低下することが知られています.
理由は一つではなく,複数の要因が関係していると考えられています.
1. 卵管本来の働きが低下する
卵管の内部には,繊毛と呼ばれる細かい構造があります.
この繊毛が動くことで,卵子や受精卵を子宮方向へ運んでいます.
しかし,炎症や水腫によって卵管組織が傷つくと,
・卵子を取り込めない
・精子が通りにくい
・受精卵を運びにくい
などの問題が起こりやすくなります.
2. 水腫液が子宮内へ逆流する可能性
卵管水腫では, たまった液体が子宮内へ流れ込むことがあります.
この液体が,
・胚にとって好ましくない環境を作る
・着床を妨げる
・子宮内膜環境に影響する
可能性が指摘されています.
特に体外受精では,胚そのものは作れても,着床率が低下する原因となる場合があります.
3.慢性的な炎症状態そのものが影響することも
卵管水腫では,単に卵管が塞がるだけでなく,慢性的な炎症状態そのものが着床環境へ影響している可能性も指摘されています.
炎症が続くと,
・炎症性物質の増加
・子宮内膜環境の不安定化
・胚を受け入れる力の低下
などが起こる可能性が考えられています.
そのため,卵管水腫は「通り道の問題」だけではなく,「着床環境の問題」として捉えられることもあります.
卵管水腫があると自然妊娠はできないのか
必ずしも「絶対に妊娠できない」という意味ではありません.
片側のみの場合には,反対側の卵管機能が保たれていれば自然妊娠するケースもあります.
ただし,
・卵管機能が低下している
・炎症や癒着が存在する
・着床環境へ影響している
可能性があるため,妊娠率が低下する傾向はあります.
また,卵管障害がある場合には,子宮外妊娠リスクにも注意が必要です.
参考)
一般的妊娠における子宮外妊娠のリスクは,1%程度とされています.卵管因子を有する女性の子宮外妊娠リスクは,数倍上昇するとされています.また,クラミジア感染歴のある女性では,子宮外妊娠のリスクは、2~4倍程度上昇するともされています.
体外受精ではどのように考えられるか
卵管水腫は,体外受精においても重要視されることがあります.
特に,
・明らかな卵管水腫が確認される
・移植を繰り返しても着床しない
・子宮内へ液体流入が疑われる
場合には,
・卵管切除
・卵管結紮
・水腫吸引
などが検討されることがあります.
これは「卵管を悪者として切除する」というより,胚が着床しやすい環境を整える目的で行われます.
卵管水腫はどのように検査するのか
検査としては,
・子宮卵管造影検査
・超音波検査
・MRI
・腹腔鏡検査
などがあります.
特に子宮卵管造影では,卵管の通過性を確認できます.
検査時には痛みや緊張を感じる方もいますが,卵管の状態を把握するうえで重要な情報となります.
妊活中に大切な考え方
卵管水腫は,「卵子が悪い」「年齢だけの問題」という話とは異なり,妊娠成立の環境側に関わる問題です.
そのため,
・年齢
・卵巣予備能
・卵子の状態
・精子の状態
・子宮内膜環境
・卵管機能
を総合的に考える必要があります.
不妊治療では,「受精できるか」だけでなく,
・胚が育つか
・子宮へ届くか
・着床しやすいか
という複数の段階が存在しています.
卵管は,その中でも非常に重要な役割を担っている場所なのです.
まとめ
卵管水腫とは,卵管の先端が閉塞し,内部に液体がたまった状態です.
卵管機能の低下や,水腫液による子宮環境への影響などによって,妊孕性低下につながる可能性があります.
一方で,状況によっては自然妊娠が成立することもありますし,体外受精を含めた様々な選択肢が存在します.
妊活では,「どこに課題があるのか」を整理しながら,一つずつ状況を確認していくことが大切なのかもしれません.

