鍼灸って何ですか?
私たちの身体には、その正常な働き(機能)を支えるためにエネルギーを供給する流れが隈なく存在します。その大きな流れを経絡と呼び、そのエネルギーを気と呼んでいます。
エネルギーの流れである経絡は体内にも体表にも存在しますが、それぞれの経絡の体表部分にはその流れに影響を及ぼし得る場所即ち経穴が多数存在しています。
鍼灸は、身体コンディションの改善や予防を目的に、これら経穴に鍼を刺入し灸を据える東洋医学の技術の一つです。経穴に鍼や灸を施術することで身体には幾つかの変化が生じます。この変化を一般に鍼灸の作用と呼びます。
- 血液の流れを整える
- 痛みを抑制するシステムを賦活する
- 自律神経の状態を整える
- 自然免疫など身体の抵抗力を整える
- ホルモンのバランスを整える
これらの他にも様々なものがあろうかと思いますが、これらが代表的なものと云えるでしょう。
鍼灸は様々な症状・疾患の背後にある性質を考え、どのような作用を引き出せば改善しうるのか、どの経穴にどのような刺激を加えるとより目的とする作用を引き出しうるのか、を考察しながら改善方法を探る施術する方法です。
どのようなときに鍼灸を受けたら良いのかについて興味がございましたら以下の記事をご覧下さい.
衛生的な鍼灸施術を心がける
私たちの身の回りは細菌やウィルスといった微生物であふれています。それは身の回りの環境に限った話ではなく,私たちの皮膚の上にも常在菌として存在しています。
バランスが保たれた常在菌は皮膚上の病原菌の増殖を抑制するなど皮膚バリアの一翼を担っています。鍼治療や注射と行った行為は、皮膚バリアを意図的に突き抜ける行為ですから、皮膚上の病原菌が皮膚内に侵入することを防ぐ必要があります。
このために行われるのが,衛生操作という一連の行為です。
- 術者の手指消毒を徹底する
- 患者の施鍼部位の周囲を広く消毒する
- 滅菌済みの衛生的な器具を使用する
- 体内に刺入する鍼は single-use (単回使い捨て)とする※1
- 施術の際には刺入時も抜鍼時も使い捨て指サック(finger cots)を使用する
- シャーレ・ピンセット・非刺入鍼(接触鍼)などの器具は適切に滅菌消毒し保管する
- 使用済みの鍼などは専門業者に依頼し感染性廃棄物として処分する※2
- 室内清掃を心がける
※1 single use は通常使い捨てと訳されますが,敢えて単回使い捨てとしました.これは同一人への1施術に限り複数回の使用を認めるという考え方があるからです.具体的言うと,Aさんの足に刺した鍼を抜針後腰にも刺すという方法です.衛生的な鍼施術とは患者術者双方に利益(安全)があるという考え方です.抜鍼により体液が付着した鍼を滅菌すらせずに再利用する行為は,おそらくどちらにとっても利益が無い行為だと考えます.このため敢えて区別しました.
※2 鍼灸院は法令上の医療関係機関等に該当しないため使用済鍼は感染性廃棄物に該当しません.使用済み鍼の体液付着を考慮して鍼灸専門ライラック治療室では感染性廃棄物として処分しています.決して医療関係機関を騙っているというわけではありません.
弊鍼灸院では、「鍼灸医療安全ガイドライン 医歯薬出版 ISBN-10 4263242114」 などを参考に施術しています。
鍼灸専門ライラック治療室における鍼灸の紹介
鍼
- 中医学に基づく鍼
- 現代医学の知見に基づく鍼
- 頭皮鍼(頭鍼)
弊鍼灸院で主に使用する鍼は,太さ0.12㎜から0.24㎜,鍼体(体内に刺入される部分)の長さ15㎜から60㎜のディスポーザブルタイプのものとなります.和鍼(ワシン)という日本式の鍼と中国針を状況により使い分けています.
経穴に鍼を刺入すると得気とか鍼響あるいは響きなどと言われるズーンとした重だるいような感覚が生じることがあります.有害な刺激ではなく鍼好きな人にとっては心地よく感じる感覚でもあります.しかし,刺入する鍼全てにこの様な感覚が生じると過剰な疲労感が生じることもありますから,不慣れな方にはせいぜい1~2割程度に生じるように努めています.
状況によりますが,ライラック治療室では頭皮鍼(頭鍼)という頭の経穴もしくは投射部位に鍼を刺入する方法も活用しています.頭皮鍼とは大脳皮質の機能局在が頭皮に投影されているという考え方に基づく施鍼法です.頭部は経穴が豊富な部位であり,頭部顔面症状,五官,神志(意識・精神・思惟活動)など関する効能を持つものが多い.当室では目・鼻・耳などの五官症状や疲労・ストレスなどの症状に使うことが多い.
灸
- 透熱灸(点灸)
- 陶器灸
- 箱灸
- 棒灸
この三つが当室でご提供している主な灸法です.
透熱灸(点灸)は、点灸用艾(もぐさ)を半米粒大~米粒大に軽くひねり経穴の上に載せて点火し経穴を刺激する方法です。艾(もぐさ)が皮膚上で燃え尽きるときに瞬間的にチクッとするような熱痛覚があります。点灸用もぐさは、ヨモギの葉などに見られる産毛様の繊維から作られます。燃焼温度が低いのが特徴です。多くの場合,施灸に当り灸点紙というシール状の紙を使用しますので,皮膚に灸痕を残ることはほとんどありません.有痕灸(透熱灸)は特に免疫をあげる必要性が高い場合に相談に応じて施灸しています.
陶器灸は専用の陶器の器に温灸用モグサを入れ、輻射熱で施灸部の皮膚をを温める方法です。温かさが心地よく持続します。腹部や腰背部などに使用し、リラックス効果を目的に施灸することが多いです。当室では炭化モグサを使用していますので、通常の温灸艾のような煙や臭いはほとんどありません。強壮保健目的あるいは生殖泌尿器系・消化器系などの症状の改善を目的目的として神厥(臍部)に使用することが多いです.