更年期障害-陰陽の均衡を揺るがす一大事

頭の経穴への鍼治療 鍼と灸とLLLTと
頭皮鍼で乱れた自律神経を調整

更年期症状としてみられる症状にはどのようなものがあるのか?

不定愁訴の代表例としても知られる更年期症状は,バラエティに富むことも知られており,その数は40~80にも上るとされています.上の図の症状の多くは軽度の症状も含めて,更年期外来を受診する女性の概ね7割以上の方が訴える症状です.

肩こり,疲れやすい,発汗,腰や手足の冷え,不安,不眠(夜間覚醒),意欲がわかない,ほてり,腰痛などは比較的症状が重くなりやすいという報告もあります.鍼灸の適応症状も多く含まれていることが窺えます.

ただし,女性医学ガイドブック更年期医療編(日本女性医学会編)では,肩こり,倦怠感,息切れ,腰痛,筋肉痛,関節痛,頭痛,めまいなどの自覚症状は閉経前後の時期との関連は乏しい可能性があることが指摘されています.

主な要因は卵巣機能の低下とされていますが,上の図を見てもお分かりのように卵巣機能の低下に伴うホルモン環境の変化だけでは説明しにくい症状も多く含まれています.加齢に伴う身体的変化,精神心理的な要因,社会文化的な環境要因などが複雑に影響しあって発症していることが窺えます.

昨今は,慢性痛とストレスと脳との関連が研究され盛んに報告されています.様々な因子によるストレスが更年期の諸症状に影響するのであれば,その因子が慢性的な痛みとして表出することは想像に難くありません.

更年期障害に関連する要因

女性の社会進出に伴うストレスの増大,自身の両親などの介護問題に由来するストレス・疲弊,子育てに関係するストレスなど,更年期の女性が抱えるストレス要因は様々です.これらの要因は単に人間関係や困難さという側面だけでなく,経済的金銭的な側面を有することにも留意になければなりません.(←結構ストレスフルってことです)

これらの要因がストレスとして関わって影響を及ぼし,更年期症状の発症,重症化の後押しをしている可能性があります.

鍼はストレスの影響を軽減

鍼が鎮痛作用や血行改善作用があることはいうまでもありませんが,ストレスと関連する副腎皮質ホルモンやオキシトシンなどを通じてストレスの緩和に関わっていることも報告されています.

東洋医学では更年期症状をどのようにとらえているのか?

東洋医学では主に腎気の衰えと衝脈任脈の滋養機能の衰えが誘因(きっかけ)となります.

  • 陰陽の均衡(バランス)が乱される
  • 臓腑の協調性が乱される

ことによって様々な症状が引き起こされると考えられています.絶経前後諸症などと呼ばれています.

生殖機能と密接に関係して,成熟を促す物質として天癸てんきが知られています.この天癸は腎精に属するため,中年期以降には徐々に衰え,更年期頃に女性は閉経を迎えます.

腎虚

腎虚になると膝や腰の痛み怠さが生じ,衝任不固となると経血量増える・突然の出血といった症状が生じます.

腎陰虚

腎陰が虚すると頭部や脳髄の滋養が不十分になり,ふらつき・目眩・耳鳴りが生じます.陰不維陽によって虚陽上越となると血管運動神経症状であるホットフラッシュ・発汗,五心煩熱(手足に異常な熱感を覚える)などが生じます.腎陰虚によって衝任脈の機能が失調すると月経不順,月経量の変化が生じます.陰虚によって血燥となると,皮膚が乾燥する・かゆいといった症状が生じます.陰虚により内熱が生じると,口の乾き・便秘・小便が濃いといった症状が生じます.

腎陽虚

腎陽虚で経脈が温煦おんくされなくなると,精神疲労・萎縮が生じます.腎陽虚によって脾の運化うんか機能が低下すると,食慾不振・膨満感・軟便などが生じます.腎陽虚によって膀胱気化機能が低下すると,頻尿・夜間頻尿・失禁,顔面四肢の浮腫みなどが生じます

心血虧損

更年期障害という前提で考えると,背景に腎虚があり,情志や心労の影響が心血に影響を及ぼしたケースというくくりになろうかと思います.

東洋医学では血と精は相互補完の関係にあり,腎精と心血の関係も然りです.生理的な調整範囲を超えるほどの強い感情の影響を受け続けたり,過度の心労などにより心血が損傷したり,不足したり,滞ったりすると,睡眠障害や動悸,物忘れ,月経量の減少やなどが生じます.

肝胆気鬱

此方は,情志の影響が肝気に影響を及ぼしたケースとお考え下さい.肝には疏肝そかんといって気の活動をのびやかに調和させる作用があります.これが鬱結すると,感情の抑鬱,情緒不安・怒りやすい,胸肋部や乳房が張って苦しい,腹が張って食欲が減少する,月経不順,月経痛といった症状が現れやすくなります.

痰湿阻滞

これは脾胃が虚弱なため水液の運化機能が失調することで痰湿が生じて経絡の流れが滞ることで生じる症状です.寒の邪の影響が長期に及んだ場合にも同様です.胸脇肋部の苦悶不快感,悪心,吐痰,精神疲労,身体が重だるいといった四肢無力感といった症状が生じやすいです.

気血津液・五臓六腑の働きは密接に関連する

東洋医学で考えるところの代表的な更年期障害のタイプを紹介しましたが,まだまだ他にもあろうかと思います.五臓六腑の働きや気血津液の働きは,それぞれが身体の健康を支えるものであり,互いに密接に関わり合いがあり影響を与えます.

加齢により腎が虚してきたという状態は,様々な臓腑や気血津液の働きに影響が及んでしまいます.また,そこに様々な方面からのストレスが影響因子として加わり身体の調節機能の乱れを増幅するというのが更年期障害なのではないかと思います.

症状が重度な場合には,様々な影響因子と乱れが複雑に絡み合っている可能性があります.西洋医学にも東洋医学にも,そして様々なところで勧められているサプリや民間療法などの対処法にも,「これさえやっておけば大丈夫」という決定打はないように思います.

ホルモン療法や漢方を試したけれども,望んだような効果が得られていない場合には総力戦が必要かも知れませんので,女性医学に精通した鍼灸師に掛かってみるのも手かも知れません.きちんと証をを把握した上で,それに見合った施術を提供してくれることと思います.

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