強壮目的に用いられてきたお灸
強壮という言葉の意味を調べると「身体が丈夫で元気なこと」と説明されています.鍼灸の理論的ベースである東洋医学では,上工治未病(上工は未病を治す)と言われるように古から疾病予防の考え方を持っていました.その具体的な方法の一つとしての役割をお灸は担っていました.
日本では 原志免太郎医師 の三里の灸が広く知られているかと思います.これは左右の足三里という経穴に毎日7壮ずつ灸を据えることにより丈夫な身体を作る施灸法です.
また,三里の灸は「徒然草」や「おくの細道」にも書かれているそうです.
徒然草
「四十以 後の人、 身 に灸 を加 へて三里 をやかざれば 、上氣 の ことあ り。 必ず灸す べ し。」
おくの細道
「そぞ ろ神 の物 につ きて心 を くるはせ 、道祖神 の招き にあひて取 るもの手 につ かず 、 もも引きの破れ をつづ り笠 の緒付 けかえて、
三里 に灸す ゆるよ り松 島の月先ず こころにか か りて、住 める方は 人に譲 り… 。」
中国の文献では以下のような灸が強壮長寿の灸として紹介されています.
- ツボに灸瘡を残しておくことにより風土病としての感染症を防ぐこと
- 延年益寿を目的として塩灸を行うこと
- 神厥への300から500壮の填塩灸は病気の治癒だけでなく延命にも役立つ
- 関元穴への多壮灸が強壮長寿に役立つこと
参考)
中学針灸学の治法と処方(東洋医学学術出版社)
お灸の歴史-科学史の視点から 東郷 俊宏
健康維持の強壮目的のお灸で使用するツボは?
灸瘡・灸痕を残してしまうお灸すなわち有痕灸(透熱灸を含む)は,やはり美容上のの問題があるのか,現代ではあまり行われなくなってきました.私個人的には点灸のツーンとした染みこむような響きが好きなので,強壮と目の熱を取ることを目的に,合谷や曲池などによく据えています.灸師として透熱灸としての点灸を患者さんに据えるのは,医療目的上免疫をあげることを望まれる方くらいで,強壮目的で据える方はさすがにいないですね.しかし,温灸であればサポート商品(温灸)も沢山販売されているので,気軽に取り組んでいただけるのではないかと思います.
お灸を据えよう スモークレス編
お灸を据えよう 点灸編
セルフケアとして施灸可能なツボは?
自ら据えられそうな位置にある,強壮補益作用があるツボを幾つか紹介しておきます.コツコツと据え続けてください.具体的なツボの取り方・特徴などについては,ブログで少しずつ紹介して行きたいと思います.
足三里
強壮作用を有するツボとして広く知られている経穴です.免疫・抵抗力を高めたり,疲労を回復する効果が広く知られています.
関元
臓腑の機能活動を推動し活発にする原気(元気・真気)と関わりの深いツボです.強壮,疾病予防,アンチエイジングを目的に昔から用いられている経穴.
神厥
神の気が通り胎児が栄養を受け取る場所である.真気と関わりが深い経穴で強壮作用が強く,疾病予防の作用とも関わりが深い.
気海
真気(元気)と関わりが深いツボです.元気を補う作用と気を巡らせる作用があります.