点灸ってどんなお灸?
温灸を含めて施灸方法にはいくつもの方法があります.日本独自で発達した施灸法に透熱灸(点灸)があります.古来日本では半米粒大から米粒大ほどの大きさに撚ったモグサを皮膚(ツボ)の上に直接置いてモグサを燃やす,有痕灸に属する透熱灸が行われていました.これが点灸です.近年では皮膚に灸痕が残る有痕灸は美容上の理由から好まれなくなったため,点灸紙(灸熱緩和紙)を用いる方法や燃焼部が皮膚に到達する前にモグサを取り除いてしまう知熱灸としての点灸が行われるようになってきています.
温灸と点灸はどう違うの?
温灸は温かさを利用して心地よい感覚を生じさせます.沢山の温灸用モグサを使用するため熱量が大きく血流改善効果が得られやすい.また,心地よいという感覚が自律神経や情動に及ぼす作用も温灸の特徴と言えます.
対して点灸は,施灸に用いる艾が点灸用もぐさであるため燃焼温度が低いこと,半米粒大~米粒大の軽く撚った艾を使用するため熱量が小さい施灸方法と言えます.温灸と異なり小さな艾を皮膚に達するまで燃焼させるため,瞬間的に遠隔部まで突き抜けるような熱痛覚が生じます.透熱灸の場合には軽微な火傷が生じ,それを修復する生理反応を症状の改善に利用していると言われています.自律神経の反射作用により血行が改善したり,白血球など免疫への作用が多く報告されています.
灸熱緩和紙を使用すると,灸痕が残るような火傷は生じません.ですが,ツーンと突き抜けるような熱痛覚は生じます.この「ツーンと突き抜けるような感覚」はとても重要であると思います.施灸技術にもよりますが,気・血・湿・熱などの鬱々とした状態を改善するには有用な方法だと思います.例えばストレスがたまっていそうな方の百会に据えるとスッキリするとか,ニキビや面疔を繰り返しているような方の下頤や合谷に据え続けると改善する場合などがあります.
点灸紙を用いて点灸に必要なもの
準備するもの
- 点灸用もぐさ
- 点灸紙(灸熱緩和紙)
- 灸用線香
- ライター
- 灰皿
- 紫雲膏
- 小さなマイナスドライバーとか耳かきなど
これは紫雲膏を灸点紙にほんの少し塗るために使用します
上の写真ではヘアピンが写っていますが通常のツボ(経穴)に施灸する場合には不要です.自分の場合は頭部の経穴によく使用するので毛髪を固定するのに使用しています.
点灸の据え方
①マイナスドライバーなどで紫雲膏をほんの少量すくい灸点紙の中央部に薄く塗る.
これは灸点紙にもぐさを置きやすくするために行います.塗布しないと灸点紙からモグサが転げ落ちてしまうので,イライラ解消のためにもお勧めします.
②経穴(ツボ)に点灸紙を置く
点灸紙はシール式になっています
③点灸紙上に半米粒大~米粒大に軽く撚った艾を置き,線香で着火する.
施灸時の注意点
紫雲膏を灸点紙に広く塗ってしまうと艾を置く際に紫雲膏が指についてベタベタしてしまいます.少量を狭い範囲に塗るのがコツです.
お灸の熱さは,艾の大きさ,撚る堅さで大きく変わります.艾は力を入れて撚るのではなく,力を入れずに形を整えるように,転がすように撚るのがコツです.