はじめに
「排卵日を合わせているのに、なかなか妊娠しない」
「人工授精を何度か受けても結果が出ない」
そんなお悩みを抱えるカップルは少なくありません。
妊娠を希望して治療を受けていても、結果が出ない期間が続くと、焦りや不安が募ります。
しかし、妊娠が成立しにくい理由は「運」や「年齢」だけではなく、身体のさまざまな要因が関係しています。
今回は、タイミング法や人工授精(IUI)で妊娠が難しい背景について、
そして36歳以降の治療方針の見直しについて、分かりやすく解説します。
タイミング法と人工授精の違いを整理しましょう
まずは、治療の基本的な仕組みから確認しておきましょう。
● タイミング法とは
排卵検査薬や超音波検査などを用いて排卵の時期を特定し、そのタイミングに合わせて自然な性交を行う方法です。
排卵日を正確に把握できることで「受精のチャンス」を最大限に高める治療ですが、受精や着床は自然に任せることになります。
● 人工授精(IUI)とは
排卵に合わせて、採取した精液を処理し、カテーテルで子宮内に注入する方法です。
精子が卵子の近くまで届くようサポートすることで、妊娠の確率を少し高めることができます。
それでも「受精」や「着床」は自然の力に委ねられており、あくまで“自然妊娠を助ける治療”です。
妊娠が成立しない主な原因
① 卵管のトラブル
卵子と精子が出会う場所である卵管が詰まっていたり、癒着して動きが悪かったりすると、受精そのものが起こりません。
タイミング法や人工授精では卵管を通過できないため、卵管の状態が妊娠率に直結します。
過去の感染や炎症、手術などが影響していることもあります。
② 卵子の質の低下
女性の年齢とともに、卵子の染色体異常率が上昇します。
見た目には元気な卵子でも、受精後に発育が止まることがあります。
また、睡眠不足・ストレス・冷え・血流不足も卵巣環境を悪化させる要因です。
③ 精子の機能的な問題
精液検査で「数値は正常」と言われても、実際に卵子を受精させる力が弱いケースがあります。
DNAの損傷や酸化ストレス、喫煙や生活習慣が影響することもあります。
この場合も、IUIや体外受精で補助的に受精をサポートする必要があります。
④ 子宮内の環境
子宮内膜が薄すぎたり、慢性炎症(慢性子宮内膜炎)があると、受精卵が着床しづらくなります。
また、ポリープや筋腫などの物理的な障害も原因になります。
これらは超音波検査や子宮鏡検査で確認可能です。
⑤ ホルモン・免疫の異常
排卵後の黄体機能不全、甲状腺ホルモンの異常、あるいは免疫反応の異常があると着床を妨げます。
血液検査で発見できる場合も多く、治療で改善が期待できます。
検査で異常がないのに妊娠しない場合も
不妊治療では多くの検査を行っても「異常なし」とされることが少なくありません。
それでも妊娠が成立しない場合、原因は「機能的不妊」にあるかもしれません。
たとえば、
- 慢性的なストレスで自律神経が乱れ、ホルモン分泌が不安定
- 冷えによって子宮や卵巣への血流が不足
- 骨盤や姿勢の歪みで内臓の働きが低下
といった、検査では見えにくい要因が関係することがあります。
こうした場合、薬や手術ではなく、体質改善・血流の調整・自律神経のケアが効果的なことがあります。
🕰 36歳を過ぎたら、治療方針を見直すタイミング
女性の妊娠力は加齢とともに少しずつ低下しますが、特に35〜37歳を境に卵子の質が急激に下がることが知られています。
そのため、36歳以降は「高齢不妊」とされ、**早めのステップアップ(体外受精・顕微授精の検討)**が推奨される年代です。
年齢とIUI(人工授精)の妊娠率の目安
| 年齢 | 1回あたりの妊娠率 |
|---|---|
| 30歳前後 | 約10〜15% |
| 35歳前後 | 約8〜10% |
| 38歳以上 | 約5%以下 |
| 40歳以上 | 2~3%未満 |
IUIを何度も繰り返しても結果が出にくいのは、精子・卵子・着床環境のいずれかが機能的に低下しているためです。
36歳を超えたら、3〜4回程度を目安に体外受精へ移行を検討するのが現実的とされています。
体外受精へのステップアップは「後退」ではない
「体外受精に進むのは最後の手段」と考える方も多いですが、決してそうではありません。
IUIまでの治療でわかったデータ(排卵の傾向、精子の反応、ホルモン値など)をもとに、
より確実に受精の場を整えるためのステップです。
年齢を重ねるほど、時間が最も貴重な資源になります。
鍼灸・漢方など体質改善の併用も有効
ステップアップしても、体の状態を整えることは重要です。
鍼灸では、血流や自律神経、ホルモンバランスを整えることで、
卵巣や子宮の環境を改善し、体外受精や着床のサポートに役立つことがあります。
「治療を変える」と同時に「体を整える」。
その両輪で妊娠の可能性を高めていく考え方が大切です。
まとめ ――「結果が出ない」のは努力不足ではなく、体の仕組みの問題
妊娠が成立しにくいのは、誰かのせいでも、努力の不足でもありません。
体のどこかに少しうまく働いていない部分がある――それを見つけて整えることが大切です。
36歳以降は、時間の経過そのものが妊娠率に影響します。
タイミング法や人工授精で結果が出ないときは、
年齢や体の状態を踏まえ、より適した治療法へ早めに進むことが未来につながります。
そして、どの段階にあっても「身体を妊娠しやすい状態に整える」ことを忘れずに。
焦らず、あきらめず、自分に合ったペースで進めていきましょう。

