瘀血とはどのような状態ですか?
瘀血という言葉は一般の方にも非常によく知られた東洋医学の用語だと思います.体内の血液の流れが悪くなり溜まってしまった状態を指しています.
ですが,施術中にクライアント様とお話をしていると,冷えと関連づけて考えている方だ非情に多く,ほかの要因にはあまり目を向けていないように感じられます.
自分の場合には不妊症への施術経験が多いので,この分野で考えてみます.
月経の期間中には胞宮が開いて経血を排出しますので,この時に寒の邪が侵入しやすい状態と言えます.また、人工授精※1や胚移植※2などの際には,胞宮を開いて精子や胚を体内に入れますので,この時にも寒の邪すなわち冷えが侵入しやすい状態と考えられます.
確かに,通常の状態よりも体内に寒の邪は入り込みやすい状況があることは間違いないと思います.
大きなストレスが血行を妨げるように,瘀血の要因には冷え以外にも幾つかありますので,状態にあった対処が重要です.
※1 排卵に併せて子宮内に洗浄濃縮処理した精液を注入する処置 ※2 受精卵を子宮に戻す処置
なぜ瘀血は生じるのですか?
血液の流れに影響を与える要因に偏りが生じると,血液の流れが滞り瘀血が生じます.
気虚,気滞,血寒,血熱,閃挫※3(外傷)など様々な要因が血液の流れに影響を与えて瘀血を形成すると考えられています.
閃挫を除いて単に言い換えますと,気の作用の低下、ストレス過労などメンタリティの影響、血脈の冷えと熱の影響などか瘀血の形成に関わるということです.
※3 閃挫とは捻挫と挫傷のことで,筋肉や腱などの繊維の損傷を指します
気虚とは,原気(元気ともいわれます)が不足したことによって生じる身体の不調のことです。
元気とは親から先天的に先天の精気から作られ,出生後は食事から得られるす水穀の精微によって滋養される気のことです.
気は体内を流れる栄養物質ですが,推動作用と言って血液や津液の流れを円滑にする作用があります.また,温煦作用と言って身体各所を温める作用もあります.
この元気の不足している気虚という状態になると,推動力が低下し身体を温煦する作用も低下するため,血液が流れにくくなり瘀血になりやすくなります.
気虚には,めまい,立ちくらみ,息切れ,倦怠感,自汗,話すのがおっくう,などの症状が現れやすいとされています.
気滞とは,昇降出入という気の運動が阻滞し円滑に流れなくなったことで生じる血行障害を伴う身体の不調です.症状は身体の様々な部位で生じますが,イライラや脹悶感,痛みなどの症状が現れます.要因としては感情の抑鬱や飲食の失調,捻挫や挫傷などの閃挫などがあげられます.
血寒とは寒の邪気が血脈に侵入して陽気が阻まれた状態です。寒客血脈と呼ばれることもあります.寒の邪は陽気を損ない気血の流れを阻滞する性質があり,痛みの主要な要因でもあります.血寒の主な症状は四肢の寒冷感、温めると軽減する冷えを伴う疼痛などがあげられます.
血熱とは,血分に熱が籠もることで生じる身体の不調です.原因としては,熱の邪が血分に作用する,精神的な抑鬱や五志(喜、怒、思、憂、恐)という感情が極まり化火する,辛い味や濃い味などに食生活が偏り熱が鬱積する,などといったものが考えられます.発熱,煩渇,口苦,便秘,鼻血,皮下出血、月経の周期が速まる,月経過多,五心煩熱,口の渇き,盗汗などの症状が現れやすいです.瘀血の関連では熱の影響で血液の粘稠性が高まることで血液の循行が阻害される
瘀血への対処で大切なこと
鍼灸では一般的に瘀血が生じている部位を考慮し,それに応じた穴性を有する経血をセレクトして配穴を組み立てます.
この時,瘀血を改善する目的に,瘀血の形成要因を改善するための配穴を付加していくことが長い目で見ると大切かと思います.