この記事は,衛生面などで気をつけているにもかかわらず,繰り返し面疔が再発している方にセルフケアとしてのお灸の視点か情報を提供いたします.
面疔とはどのような症状か?
面疔とは顔にできる「できもの」のことで,嫌気性の黄色ブドウ球菌などが毛包で増殖し炎症を起こした状態を毛包炎といいます.その炎症が周囲の組織まで広がった状態を癤,周囲の毛包にまで広がった状態を癰といいます.大きなできものが顔にできて,痛いし見た目も良くないので繰り返し生じるのは勘弁願いたいところです.
黄色ブドウ球菌は常在菌として腸内や喉鼻の粘膜,皮膚にみられる菌です.これが何らかの原因によって毛包で過剰に繁殖してしまうと面疔の原因になってしまいます.発症を予防するために手や顔の皮膚の衛生面に気をつけるように書かれている物が多いですね.おそらくお灸や東洋医学を扱ったこのブログをご覧になっている方の場合には,そのような衛生面でのケアは既に行っている方が多いのではないかと推察いたします.
常在菌として皮膚に存在しているのですから,他の菌とのバランスが大切になると考えます.また、皮膚にも免疫が存在しますから,これが何らかの影響で弱ったときにも特定の菌が繁殖しやすくなるのではと考えられます.
※バランスの良い食生活が大切
※規則正しい生活などでストレスや疲れを貯めない
といった助言は,常在菌のフローラや免疫のバランスを保つには役立つ方法かも知れません.
お灸は免疫をアップする健康法
お灸は免疫に影響を与える施術法です.お灸と免疫の研究を検索すればいろいろと見つかるかと思います.この記事は面疔をテーマにしているので,具体的に黄色ブドウ球菌を扱った灸の研究はあるのかなと疑問に思い調べてみました.結果として,ありました.黄色ブドウ球菌との関連では次の研究が参考になるかも知れません.ウサギさんを使った動物実験による研究ですが,週に1回ほどツボに透熱灸を据えることで抗体産生が高まって来ることが報告されています.施灸開始後,少しずつ高まりはじめ2ヶ月くらいでピークに達しその後は施灸の継続により抗体産生は維持されるようです.以下からダウンロード出来ますので興味のある方は呼んでみてはいかがでしょうか?
黄色ブドウ球菌免疫ウサギ血清中の抗体産生に及ぼす灸の効果
下頤というツボは何処にある?
下頤というツボは余り知られているツボではありません.これは灸療夜話(入江靖二著 緑書房)のなかで紹介されているツボです.鍼灸の学校に通っている頃に読んで自分に試したところ,ツーンとした刺激が頭部に抜けていくのが気持ちよく,以来頻繁に活用しているツボです.任脈の経穴ではありませんが,任脈の流注にあるツボです.任脈は胞中(子宮)おこり腹部胸部を経由して,下顎,口唇,頬部を巡り眼窩に至り,陰脈の海ともいわれています.任脈の流注と面疔の出来る場所,腸内フローラと免疫の相関など考えると使ってみたくなるツボの一つです.
下顎骨の左右のオトガイ隆起と呼ばれる骨の隆起の中央に取ればよろしいかと思います.と,説明されてもわかりにくいかと思いますので,写真を参考にしてください.
面疔の灸として下頤穴に灸を据える場合にはどんなお灸がお勧めですか?
可能であれば次の写真のような灸点紙を用いた点灸がお勧めです.どうしてかと申しますと,面疔の灸の場合には施灸部を温めるというよりも免疫系への作用をより期待したいからです.先に紹介したウサギさんを用いた研究ですと有痕灸としての点灸を用いていました.人の顔への施灸の場合には美容の観点から,有痕灸は避けなければなりませんので灸点紙(灸熱緩和紙)を用いた点灸を行います.そもそも,美容上の観点からも面疔の繰り返し発症は防ぎたいという話でもあります.
次の写真をみていただけると分かるように,点灸紙には小さな穴が空いています.大きすぎる艾や硬く撚った艾で据えると,灸点紙を使用していても小さな灸痕が出来ることがあります.柔らかくはじめは小さめに艾を撚ることが重要です.
また、艾を捻り慣れない方が柔らかく半米粒大程に艾を撚ることも難しいですが,撚った艾を灸点紙上に於く(立てる)ことも結構難しいかも知れません.ですから,下の写真のように予め紫雲膏という軟膏を灸点紙に薄く塗っておくことをお勧めします.これにより艾を立てやすくなりますし,小さな穴に紫雲膏が少し入ることで更に熱がマイルドになり灸痕の予防となります.
また、軟膏を塗ることで粘着性が上がり傾けても艾が落ちにくくなりますので,鏡を見ながらでもお灸を据えやすくなります.
紫雲膏をお買いになるのであれば小さい容量のものをお勧めします.10~20g程の小さい容量でも十分すぎると思います.
艾に点火する際には線香の煙を多量に吸い込まないように,上を向くか横になって点火するとよろしいかと思います.
何壮くらい据えるのですか?
5~10壮ほど据えると良いかと思います.下頤の場合,出来ればツーンとした刺激が頭部に抜けるまで据えた方が良いかと思います.艾のひねり方の堅さなどを調整しながら無理せずに据えてみてください.火傷に注意しつつ行ってみてください.
面疔のお灸として一緒に据えると良いツボはありますか? 合谷も据えましょう
合谷は顔面部の症状の改善には頻繁に用いられるツボです.ですから,面疔の灸としても合谷は非常に良く用いられるツボです.むしろ,下頤よりも使われているかも知れません.据え方は下頤と同様に灸点紙と紫雲膏を使用してください.
こちらも是非ご参照ください.