血管内皮から放出される「NO(一酸化窒素)」の働き
低出力レーザー治療(LLLT:Low Level Laser Therapy)は、
✔ 痛みを和らげる
✔ 冷えを改善する
✔ 妊活や慢性痛のサポートに使われる
といった特徴を持つ治療法です。
その中でも近年、「血行が良くなる理由」として注目されているのが
血管内皮細胞からの NO(一酸化窒素)の放出です。
血流をコントロールしている「血管内皮細胞」
血管は単なるホース(管 or パイプ)ではなく、
内側には 血管内皮細胞 という“司令塔”が並んでいます。
この血管内皮細胞の役割は:
- 血管を広げる / 縮める指令を出す
- 血流量を調整する
- 血管の老化や炎症を防ぐ
つまり、血流の質を決めている細胞です。
妊活がうまくいかない方や、慢性痛・冷えがある高齢の方では
この 血管内皮機能が低下している ケースが少なくありません。
NO(一酸化窒素)とは何か?
NO(一酸化窒素)は、体内で作られる ガス状の情報伝達物質です。
血管内皮細胞から放出されると、
- 血管の平滑筋がゆるむ
- 血管が拡張する
- 血流がスムーズになる
という作用をもたらします。
NOは「血管を広げる天然の薬」のようなも。
NOは
- 血圧調整
- 臓器への血流確保
- 炎症や血栓の抑制
に不可欠で、若さ・妊娠力・回復力と深く関係しています。
LLLTはどのようにNOを増やすのか?
低出力レーザーは、**温熱ではなく“光刺激”**です。
この光が、血管内皮細胞の中にある ミトコンドリアに作用します。
① ミトコンドリアに光が届く
LLLTの特定波長の光は、細胞内まで浸透し
エネルギー工場であるミトコンドリアを刺激します。
② NOが「結合」から「解放」される
通常、ミトコンドリア内では
NOが酵素と結合して“眠った状態”になっています。
LLLTの光刺激により、このNOが解放され
血管内皮から外へ放出されます。
③ 血管が拡張し、血流が改善
放出されたNOは血管壁に作用し、
- 毛細血管が開く
- 局所の血流が増える
- 酸素と栄養が届きやすくなる
という変化が起こります。
妊活中の女性にとっての意味
妊活において重要なのは、単にホルモンだけではありません。
- 子宮
- 卵巣
- 子宮内膜
これらの臓器に 十分な血流が届いているか が非常に重要です。
血流が悪いと、
- 内膜が育たない
- 卵巣の反応が鈍い
- 冷えが改善しにくい
といった問題が起こります。
LLLTによるNO放出は、
ホルモン刺激とは別ルートで「土壌」を整える手段といえます。
高齢の慢性痛患者さんにとっての意味
慢性的な痛みの背景には、
- 局所の血行不良
- 酸素不足
- 老廃物の停滞
が存在することが多くあります。
加齢とともにNOの産生能力は低下しますが、
LLLTは 残っている血管内皮機能を呼び覚ます 作用があります。
その結果:
- 筋肉の緊張が緩む
- 炎症が鎮まりやすくなる
- 痛みの回復が早まる
といった変化が期待されます。
LLLTは「強く刺激する治療」ではない
低出力レーザー治療は、
- 組織を壊さない
- 熱くならない
- 身体の反応を引き出す
という 非常に穏やかな治療です。
だからこそ、
- 妊活中の方
- 高齢の方
- 慢性症状が長い方
にも適しているといえます。
また、穏やかな治療であるために、反復継続的に取り組む必要があります。これについてはまたの機会に詳しく述べたいと思います。
まとめ
- LLLTは血管内皮細胞に作用する
- NO(一酸化窒素)の放出が血管拡張を促す
- 妊活・慢性痛の共通課題「血流改善」に有効
- 身体が本来持つ回復力を引き出す治療法

