「検査では異常なし」と言われたけれど…
「胃が重い」「背中が張る」「食欲がわかない」「すぐにお腹が張る」…
こんな不快感が続いて病院で検査を受けても、「異常はありません」と言われてしまうことがあります。
薬を飲むとそのときは楽になるけれど、また繰り返してしまう…。
そんなお悩みを抱えている方は、実は少なくありません。
日本では 10人に1~2人 が「機能性ディスペプシア」と呼ばれる慢性的な胃の不調を抱えているといわれています。
胃の不快感を感じている方まで含めると、1,000万人以上の方が同じように悩んでいる計算になります。
「自分だけじゃないんだ」と思えると少し気持ちが楽になりますよね。
慢性・機能性の不調とは?
近年「機能性ディスペプシア(FD)」や「過敏性腸症候群(IBS)」といった診断名を耳にすることが増えてきました。
これらは胃や腸に器質的な異常が見つからないのに不快な症状が続くタイプの不調です。
背景には、
- ストレスや精神的な緊張
- 睡眠不足や不規則な生活
- 自律神経の乱れ
などが関わっていると考えられています。
中医学的にみた病因・病機
東洋医学では、同じ「胃の不調」でもいくつかのパターンに分けて考えます。
- 脾胃虚弱 … 食後の胃もたれ、倦怠感、食欲不振
- 肝気犯胃 … ストレスで悪化、胃の張りやげっぷ
- 湿熱中阻 … 脂っこい食事で胸やけ、逆流感
- 胃陰虚 … 胃の灼熱感、口の乾き、慢性的な食欲不振
症状の現れ方を見極めて施術方針を決めるのが、中医学の特徴です。
鍼灸の治療方針(総合)
鍼灸では次のような方向性で施術を組み立てます。
- 健脾和胃:胃腸の働きを整え、消化吸収を助ける
- 疏肝理気:ストレスで滞った「気」の流れをスムーズにする
- 清熱化湿:胸やけや逆流感が強いとき、余分な熱や湿気を取り除く
- 養陰和胃:胃の乾き・灼熱感に対して潤いを補う
症状に合わせてアプローチを変えることで、より効果的に不調の改善を目指します。
ストレスや自律神経の乱れでなぜ胃に不調が出るのか?
「ストレスがたまると胃が痛くなる」「緊張するとすぐに胃が重くなる」――こんな経験はありませんか?
これは決して気のせいではなく、身体の仕組みから見ても自然な反応なのです。
胃は自律神経の影響を強く受ける臓器
胃の動きは自律神経にコントロールされています。
- 副交感神経が優位 → リラックスして胃腸が活発に働く
- 交感神経が優位 → 緊張やストレスで胃腸の動きが抑えられる
そのため、ストレス下では胃もたれや胸やけなどの不調が起こりやすくなります。
東洋医学からの視点
中医学では「ストレス=肝気の停滞」と考えます。
肝の疏泄が乱れると胃の働きが妨げられ、げっぷ、張り、胸やけなどが生じるのです。
背中や肩のこりにも影響
胃と関わりの深い神経は背骨の近くを走っているため、胃の不調が「背中の張り」や「肩甲骨の間のこり」としても現れます。
「胃と背中はつながっている」と患者さんが感じるのは、このためです。
代表的なツボと施術の工夫
鍼灸では症状や体質に応じてツボを選びます。
ツボにはそれぞれ得意分野や性格=**穴性(けつせい)**があり、それを考慮しながら配穴を決定します。
- 肝兪・脾兪(背中)
鍼通電を行うと胃の張りや背中の重さがスッと軽くなります。 - 足三里(膝の下)
胃腸を補い、食欲不振や胃の働きが弱いときに。 - 梁丘(太もも)
胸やけや胃酸過多、逆流感に。 - 中脘・内関
胃の動きを整え、ストレス性の胃不快感や吐き気に。
セルフケアも大切です
- 睡眠リズムを整える
- 暴飲暴食や寝る前の食事を避ける
- ストレスをため込みすぎない
また、同じツボを使用し続けると身体が慣れて効果が落ちてしまうこともあります。
定期的に鍼灸院でチェックを受け、状態に合わせてツボを調整すると効果的です。
まとめ
慢性的な胃の不調や背中の張りは、検査や薬だけでは改善しにくいことがあります。
鍼灸は自律神経を整え、胃腸の働きを助けることで、体質そのものの改善につながります。
「なんとなく胃が重い」「疲れるとすぐに胃に出る」――そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。